2013/09/03

胸膜癒着療法(補足)・・・

私のブログの中で、胸膜癒着療法へのアクセスが最も多いようです.
医療従事者以外にも、案外、気胸の患者さんもアクセスいただいているのでしょうかと推測しています.追加・補充のコメントをのせておきます.

肺の手術にあたっての合併症で、最も多いのは、術後のエアリークでありましょう.

この数年来、内視鏡手術全盛となり、全例で自動縫合器を使用して、病変部を切除するようになっています。

しかしながら、自動縫合器で綺麗に切離しても、また、術直後にリークを認めていなくても、おくれてリークが出ることがあるのが現実であります.

エアリークの無い手術を理想としていますが、個々人の肺・胸膜の違い、切離線の違い、複数個使用したときの重なり部分の違いなどから、やはり、「肺の手術に空気漏れはつきもの・・・」と感じております.

さて、術後のリークは、胸腔ドレナージチューブを抜けないということですら、退院までの日数がそれだけ延びるということであります.

当院における術後のドレーン管理について記載します.ご意見ございましたら、よろしくお願いします.

(1)術後の低圧吸引圧は-10cmH2Oを維持します.

(2)リークが無ければ、排液量200mL/dayを基準にドレーン抜去します.

(3)術後4日目の朝になってもリークが残っている場合。癒着療法を行います.
 ミノマイシン 200mg + 1%キシロカイン(10ml) + 生理食塩水50mlを点滴セットにつめて、胸腔ドレナージのチューブから胸腔内へ点滴滴下します.チューブを高くあげ、注入液が落ちないようにしつつ、患者には深呼吸を繰り返し行わせ、液が胸腔内に入って行くようにします。ミノマイシンが入って行くに従い、痛みを訴えることがありますが、キシロカインが効いてきますので、じっとまちます。非常にまれにショック症状を来すこともあると聞いていますので、患者の状態をしっかりと観察することが大切です.
 その後は、15分ごとに体位変換、左側臥位、右側臥位、伏臥位、仰臥位を繰り返し、2時間で終了です.排液は夕方くらいまでは積極的に抜かないように、チューブは高くしておいています.
 発熱は38℃くらいまで。水分補給、場合によっては点滴をしています.
 ピシバニールでも行う事がありますが、良性疾患には適応がありませんので、肺癌以外ではミノマイシンを使用しています.

(4)感染予防に内服の抗生物質を追加します。患者のタンパク質などの栄養状態の改善を進めます.アミノ酸製剤の点滴を続けています.カロリーが足りなければ脂肪製剤も投入します.

血液凝固因子の第13因子の測定も行っておきます(外注検査です)。個々数年、フィブロガミンを使用する症例は減ってきている印象がありますね.

(5)術後7日目になっても止まらなければ再度癒着療法を行います.

(6)術後9日目になってもリークがある場合、長期戦を覚悟しつつ、胸腔造影を行います.チューブからウログラフィン20ml/Aを2A注入しつつ、リークの部位を探します.息を吸ったときにリークの泡が見えればよいですが、見つからない事もあります.

(7)手術術式、リークの量を考えながら、再々の癒着療法、場合によっては、フィブリノゲン製剤の局所散布を考慮します.

胸部外科学会の学術調査書、手術術式、合併症などを毎年報告する義務があるのですが、2週間を超えるリークは、合併症になります.
私の経験では、17日というのが1例ありますが、それ以外で2週間を超えた症例はないです。

肺切除、リーク”ゼロ”は夢であります。


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