消化器外科のなかでは、腹腔鏡下胆嚢摘出術を、臍したに1カ所のきずで行うSingle Incision Laparoscopic Surgery; SILSが行われつつ有ります.臍下のきずは少し大きくなりますが、ここに3、4本の鉗子類をいれて、内視鏡手術を行うものです.
外科の歴史からいうと、腹部の外科技術は、胸部の手術にも移植されます.そこで、気胸に対する胸腔鏡下肺部分切除(Single Incision Thoracoscopic Surgery; SITS, 「おすわり」みたいでかっこわるいですが・・・)へ応用できないかという事で、トライされつつ有る手技であると思っています.
安全性、確実性を担保できないようであれば、新しい手術手技として成立しません.本術式は、呼吸器外科学会(2009年以前)でも、まだ演題発表はなかったように思います.
第2肋間鎖骨中線から、ミニループリトラクター(注射針の中に、金属ワイヤーでできた投げ縄を仕込んだものと考えてください)を挿入します.肺尖部のブラを投げ縄の中に入るように広げておきます。3cmの小切開創からは、胸腔内の観察用にφ10mmのハイビジョン内視鏡を挿入していますが、その隙間から、細い肺把持鉗子を入れ、肺尖部のブラを把持して引っ張り上げます.ブラの根っこにミニループリトラクター(投げ縄の輪)が来たところで、投げ縄を締めます.ブラが完全に切除される側に入って、根っこのところが締まった事を胸腔鏡で十分に確認します.
後は、ワイヤーを切らないように自動縫合器を通して、肺を部分切除すれば終了です.今回は自動縫合器を2本使用しました.
SITSをされている施設の先生、ご意見をいただければ幸甚に存じます.